鈴木心インタビューPart2 (Part1・Part3・Part4)
『写真のレイアウトをしてたら、『あっこれ、カードダスだ!』って』
前回Part1では、ゲームと写真の接点を伺いました。今回は、もうひとつ鈴木さんが写真の大きなヒントを得たものをご紹介します。それはなんと、「カードダス(*1)」!
鈴木 ゲームのほかに、もうひとつ、僕の写真のすごいネタになっているものがありまして、それが、、、、、カードダスなんですよ。
−− カードダスとはまた懐かしいですね!
鈴木 カードダスって、僕ら学生の時ってよくやっていたんですけど。チョコレートのウエハース食べなくてもカードが手に入ったんで、精神衛生上健康的に収集できる玩具でしたね。特に『SDガンダム』。戦国時代とか騎士ガンダムとか、真のガンダムファンからすると、「あ〜」みたいな酷いリアクションをうける類いのものなんですけれど、テレホンカードくらいのサイズのカードにキャラクターが真ん中に配置されていて、とってつけたような背景のレイヤーが差し込んである。僕らの業界では「切り抜き」と言うんですけど、キャラを切り抜けばどの背景でも組み合わせられて、その強引さがちょっと違和感を生むんです。
カードダスのガンダムシリーズは皆このフォーマットなので、標本みたいなんです。ずらーっと並べてみると、その組み合わせで壮大な世界になる。写真って、一枚一枚は実際に世界の断片なんですけど、それを組み写真にするとその配列によっては自分が見せたい世界に書き換えできる。写真作品の構成だけじゃなくて、ほんと、たまたまなんですけど、被写体が真ん中にあって背景はフラットに撮るっていう、撮影していた写真そのものもカードダスみたいな写真を撮っていた(笑)。もちろんカードダスが自分のバックグラウンドにあるっていうことを、当時はわからないでやっていたんです。ところが、ある日写真をレイアウトしようとして、小さくサムネールを切って並べていったときに、あれ、これなんかやったことあるなって。あれ、これ『ラクロアの勇者(*2)』じゃないかっ!って。
−− そんなことが!(笑)
鈴木 これは、撮影法というよりも、カードダスみたいに収集するっていうコレクションの感覚です。絵は描けないけど、現実をカードダスのように切り抜くことによって、非常に客観的にその事象をキャプチャできる。それを並べていくと、カードダスはファンタジーの世界というかフィクションの世界だけど、リアルにカードダスの世界が作れているっていうことに制作過程で気づいたんです。ただ、カードダスって言っても(写真業界の人は)誰も知らないから、その言葉使ったことないんですけど。でも、明らかにカードダスだった。
−− 写真関係で鈴木さんにインタビューする人はカードダスとかピンとこないかもしれないですね。とは言え、元々写真でもコレクション的な撮り方ってあるじゃないですか。それを勉強したからというわけではなくて、カードダスからって感じなんですか?
鈴木 絵の構築の仕方はカードダスからですね。ああいう中でのデザインもきれいなんですけど、モノの配置が……。
(鈴木さんに、カードダスのGoogleの画像検索結果を見せる)
鈴木 そうそうそう、これです、これ!! キラじゃないほうがいいんですよね。僕、ラクロアの勇者っていう最初のあたりの騎士ガンダムが好きだったな。騎士ガンダムとかは、ファーストガンダム好きっていう人からすると。ほんと邪道なんですけど。
(さらに検索画像見て……)
鈴木 モノが中心にあって背景がある。こういう現実を標本的に撮っていくっていう写真のやり方は、ガードダスそっくりなんですよ。
−− それ、みなさんにわかるように使える写真いただけませんか? 具体的な写真をお見せしないとピンとこないと思うんですよ。これカードダス的に撮りましたっていうのがあるとすごくわかりやすいと思います。
鈴木 そうですね、サンプルお出ししますね。カードダスに写真の撮り方や並べ方のすごいヒントがあったっていうのは、自分で自分をふりかえって勝手に感動しました。
−− まさか鈴木さんがカードダスをお手本にしていたとは思わないですね。とても興味深いお話、ありがとうございます。
<今回の感想>
写真のスタイルにカードダスからも多大な影響を受けていた鈴木さん。Part1でご紹介したゲームと写真のエピソードと併せて、鈴木さんがなぜコミケなのか? というところの輪郭が現れてきました。次回Part3では、鈴木さんとコミケの関わり合い、その核心に大分量で迫ります。
Part3に続く