鈴木心インタビュー Part4


鈴木心インタビュー Part4(Part1Part2Part3)

『そのキャラクターを選んでいるのはあなたです。コミケットスペシャルに向けて』

Part 3 までお読みいただいたところで、なぜ鈴木心がコミケなのか? という疑問をお持ちだった方も、もう何も違和感がないところまで来ていただけたのではないかと思います。最終回のPart 4 では鈴木心写真館@コミケットスペシャルへの意気込みをうかがいました。

−− 最後になりますがコミケットスペシャル6に向けて、何かみなさんにメッセージやアピールなどありますか?

鈴木 スペシャル、もう頑張るしかないね。結局僕は自分の色でしか提示できないんですよ。

−− 鈴木さんの色と言いますと?

鈴木 コスプレの人たちを調べると、廃墟でキャラクターがアニメのように撮られている写真とかよく出てきますよね。

−− いわゆる「再現」ですね。

鈴木 そうそう。それができなくて申し訳ないと思うんですよ。文脈が理解できてないから。でも、それを自分がやりたいかっていうとそういうわけではないんです。出会いがしらでぶつかったある種の事故みたいなものなんだけど、今までと違ってよかったって思ってもらえるような写真を撮りたいって思っています。なので、みなさんは僕に自分を預けてほしいし、こっちもそれを全力で取り組むっていうのが、自分のできることだと思っています。今までと違う写真を撮りますよ、と。

−− 今まで撮ったり撮られたりしてきた写真とは違う?

鈴木 きっとそれはすごく良い新しさとして受け取ってもらえるものになると思います。(コミケット87のプレ写真館で)午後になって、自分のペースで撮っていけるようになって、その人が見えちゃうっていうか、キャラクターが見えるんじゃなくて、その人の性格が見える写真を撮っているってことに気付いたんです。だって、そのキャラクターを知らないからね。でも、それでいいんじゃないかなと。キャラクターはあくまでキャラクターだし、それを再構築するっていうのは文脈としてありなんだけど、でも、そのキャラクターを選んでいるのはあなたじゃないですか、と。

−− キャラクターそのものではなくて、そのキャラクターを選んでそのキャラクターのコスプレをしているその人を撮るという……。

鈴木 その人が演じるそのキャラクターを撮るわけです。あなたの中にそのキャラクターが含まれているのであって、そのキャラクターにあなたが含まれているんじゃない。誰かに「このキャラクターやりなさい、衣装はこれです」って言われているんじゃなくて、自分でそこまで構築しているわけじゃないですか。そのキャラクターを撮っていなくても、それでも快く受け取ってもらえるような写真を撮るつもりです。でも、それを受け取ってもらえなかったらどうしよう……。

−− それはちゃんと通じると思います。

鈴木 それでこそコスプレやる人たちも一歩踏み出すというのかな。ずーっと隠れ隠れみたいじゃなくて、もっとその肯定されていい存在です。だって人より大変なことやっているんですから。サークルで出展している人だって、コスプレやっている人たちだって、バイトとか学生とか社会人やりながら、その傍らで好きなことしているわけでしょ?

−− 本業の傍らであれだけやるわけですからね。

鈴木 そう、そこなんです、すごいなって単純に思うのは、自分も少なからずそういうタイプの人間だというのもあります。そして、自分が好きなものを作ってきた人たち。Part1Part2で話したゲームを作ってきた人たちとかカードダスを作ってきた人たちだってそうやって仕事していたはずなんです。残業とか関係ない!ってやっていたと思うけど。みんなそうなんだから。飲み屋に行ってキャバクラ行ってみたいな奴らに、ちょっと一発食らわしてやろうぜみたいな(笑)。

−− おーーー!(爆)

鈴木 あなたの、その人生それでいいの?っていう……。

−− 逆を言うとコミケに来ている人たちの人生っていいね、って話にもなりますよね

鈴木 いやー、いいですよ! やっぱり趣味と夢があるって、すごくいい。今、福島の小学校(*1)に行っているんですけど、小学生もみんなやっぱり「こういうふうになりたい」っていう具体的に夢があるんです。だって、大地震があって、ライフライン全部止まって、放射能の問題もあって、それでこれから生きてくっていったら、そういうなりたいものとか目標とか無かったら、やっていけないじゃないですか。

かたや、専門学生とか美大生とかに、どういうフォトグラファーなりたいのとか、何の職業につきたいのとか聞くと、ファッション関係とかカルチャー関係とか、適当なこと言うわけですよ。

−− うーん(苦笑)。

鈴木 そんな余裕があるっていうのが、僕はもったいないなって思う。こんな好きなことがある人たちがバイトとかやっているんだったら、就職しようよそっちに、とも思います。そういう人達がいる一方で、何にもやりたいことはないけど、一流企業に就職して適当に事務屋で暮らして結婚してみたいな人達もいる。でも、そういうの楽しいかな? って思うからこそ、日の光を浴びなくても好きなことやってるってパワーをすごく信頼したいし期待したい。

−− そういっていただけるとうれしいですね。

鈴木 僕自身も、いつでも「ゲーム作る方に行きたい」とか「ゲーム音楽作る仕事したい」とかってうずうずしていました。中学生の自由研究も「ゲーメスト」を読んで、『ゲーム会社の勢力分布図』でしたからね(笑)。でも、それって無いものねだりで。やれるって思っていてもやれない、って思うんです。

−− 鈴木さん、やれないですか?

鈴木 シナリオだけは考えるんですよ。自分の立場だったらプログラムはできないけど、プランは提示できるんじゃないかなと思って。それは、これからでも素人が参加できる新しい格闘ゲームの窓口みたいなもの。なんとかツーとかダッシュとかターボとかのバージョン違いじゃなくて、新しいシナリオでやろうよって。新しいシナリオでやるけど、きちんと日本を海外で知ってもらえて、その場所まできてくれてっていうプレゼンテーションになるようなものを。

−− 格闘ゲームの窓口だけど、日本のプレゼンをしちゃうようなゲームを作るんですね。

鈴木 あとは、日本の歴史をもっと知るための説教じみた内容じゃなくて、ゲーム好きでゲームをやっていたら自然と勉強できちゃったみたいな……。日本史ってこうだったんだとか、題材は日本に沢山あると思いますから、『艦これ』みたいなああいうものってもっと出てくるべきだと思います。そういうことは色々考えるんですけど、全然そういう接点がないからお伝えすることもできないし。自分の中でずっとプールしています。

−− コミケに行けば接点はあると思いますよ。

鈴木 怖いですよね。(笑)

−− 本業でゲーム制作者の人って沢山いますからね。絵を描いてる人、プログラムやってる人、作曲している人、いろんな方がサークル取っています。

鈴木 そして、やっぱり、僕はセガ的なものがいいです。自分が影響を受けてきたところにその血脈をお返ししたい……。いつまでたってもセガのシナリオ構築力の弱さとプロダクトアウトなところが大好きなんで。

−− あはは。でも、だからこそイケてるんじゃないですか?

鈴木 あの時は……(以下略)。『バーチャ5』も一段落着いたところですし、バーチャ後の次のセガの代名詞になるタイトルみたいなのをやりたいですよね。でも、本当にやるんだったら社風は正直ナム……(以下略)。

−− うわあ、最後に何てことを……。これは、あくまでも鈴木心さん個人の見解ですからね!

(再び大脱線しつつ終わり)

<まとめの感想>

ゲームとコスプレをきっかけにコミケに通うようになった鈴木さん。「参加者のパワーを信頼したい」とのコメントもうれしいですね。コミケットスペシャルでは、写真館に来ていただいたみなさんに「今までとは違う写真を渡せるように全力で取り組む」との意気込みを語っていただきました。是非、鈴木心写真館@コミケットスペシャルにお越しいただき、そのすごさを実感していただければと思います。鈴木心さんと共に、ご来館をお待ちしております。


(*1)福島の小学校 鈴木さんは福島・郡山の出身で、震災後福島で様々な教育活動をしている。

<C87での撮影風景>

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<C87で撮影された写真>

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