直前レポート『修羅場の車窓から』#19


第19回「不惑」

今週末に行われる全体での責任者直前ミーティング、部署別のミーティングなどの資料が飛び交い始めました。前回のミーティングで出た「宿題」に対し各々がどう考え、調整を行い、運用に落とし込んでいるのか。そして、新たな「課題」にどのように取り組んでいるのか。相手を信頼して背中を任せながらも、協力しながら死線を潜り抜けて行くこの空気は、イベント直前の醍醐味かもしれません。

担当ごと・企画ごとに、また時には時系列を追いながら、懸念点を洗い出していきます。「やらなくてはいけないこと」と「やったほうがいいこと」が大量に出てくる中、残りの時間・ヒトをどのように投入していくのか、胃の痛い日々が続きます。

さて、OTAKU EXPO(展示ホール5)内の記念すべき「コミケット40周年ブース」をご紹介します。第1回のコミックマーケット(正確には「第1回」とも銘打たれていなかったのですが……)が開催されたのは40年前の1975年12月21日、会場は虎ノ門の日本消防会館、参加サークル数はわずかに32サークル、参加者数は推定700人でした。それから39年、昨夏のコミックマーケット86の参加サークル数は約35,000サークル、参加者数は55万人と約1,000倍の規模にまで拡大しました。

※ Wikipediaで1975年のできごとを調べたところ「タイムボカンシリーズ放送開始」「アタック25放送開始」など、なぜか今年とつながる話題の多い年ですね。

40周年ブースではこうしたコミケットの軌跡を年表で追います。歴史の中で繰り返された場の継続に対する危機、そしてそれをどう乗り越えてきたのか、コミケットという場がある種の奇跡の上に成り立っていることが見て取れるかと思います。

また、40年の歴史の中で、同人文化における潮流も著しく変わってきました。カタログ表紙や企業ブースパンフレット表紙、森林保護募金ポスターの展示では、時代と共に変わりゆく技術の進化や、絵柄の変化などを感じ取ってもらえるはずです。併せて、前回のスペシャルで水戸の地元企業さんとコラボして作った商品群も展示いたします。

続いて、サークル参加申込書セットに付属する、参加者と準備会のコミュニケーション媒体である「コミケットプレス」も、今年20周年を迎えます。わいせつ・児童ポルノ・著作権・税金……といった同人誌を取り巻く法令についての情報提供、印刷会社・出展企業・鉄道会社……といったコミケットにかかわる企業の声、そして時にはコミケットの舞台裏紹介など、様々な記事を掲載してきました。ネットの普及以降は「ぐぐれる」内容もあるは確かですが、こうした事実をコミケット視点で解釈してお伝えするという、重要な役割を果たしてきたメディアです。この20年間の同人界の流れを映す鏡になっていると思いますので、ぜひご覧下さい。

※ プレスの説明にやたら力が入っているのは、実は10年間くらい私がコミケットプレスの小人さんをやっていたからだったりします。今回の出張版でついにカタログに似顔絵が載ってしまいました……ちょっと嬉しいです。

そして、サークルさんやコスプレイヤーさんの参加企画である「モザイクアート展示」です。こちらはイラストやコスプレ写真を組み合わせて、1枚の絵としております。近くで個々の画像を見るときと、少し離れて全体を見るときで全く異なる様相に驚かれるかと思います。これは当日生で見ないと迫力が伝わらないと思うので、私も楽しみです。

最後に準備会記録班による記念映像の上映です。資料として撮影しているため、準備会スタッフ以外にはこれまであまり公開してこなかった記録映像を編集し、40周年を記念する映像となるはずです。いったいどんな中身になるのか、ドキドキしますね。

※ 文章からお察しの通り、19日現在制作中ですので、ドキドキもひとしおです!

以前より告知していた鈴木心さんの写真展「Comiket Photo Gallery」(参加者のみなさんを撮影する「鈴木心写真館」は企画サークルのある展示ホール3なのでお間違いなく)もこのブースで行います。鈴木心さんならではの大群衆の切り取り方は見所バツグンだと思います。

ということで、文章量からも分かる通り、盛りだくさんのコミケット40周年ブースに、是非とも足を運んで下さい。人間だと40歳は「不惑」ですが、コミケットという「場」はこれからも参加者のみなさんと共に変化していくはずです。それは場であるがゆえ、そこに集う参加者と表現によって変化するということであり、場として継続するために柔軟に形を変えていくということでもあります。「賢者は歴史に学ぶ」という言葉がありますが、参加者のみなさんが未来のコミケットを考える礎石となれば幸いです。

(事務局長)