直前レポート『修羅場の車窓から』#22

3月22日(日) 第22回「最後の一葉」

かつて、次の週末に人類は滅亡だ――というイントロのゲームがありましたが、泣いても笑っても、次の週末に今回のスペシャルは終了します。このゲームと別のゲームのクロスオーバー本で、次の週末に人類が滅亡するけど、同人誌即売会がある――という設定の同人作品があったことを、思い出しました。仮に世界が終わるとしても、サークルさんは作品を作り続けるのだろうし、僕たちは準備の手を止めないのでしょう、たぶん。

と、センチメンタルな入りにしてしまいましたが、今期のアニメも続々最終回を迎えつつあります。最近では1クールアニメが多いので、視聴習慣ができてきたと思えば終わってしまい、寂しいですね。スペシャルに時間を投入していたので4月新番は全くチェックできていませんが、スタートダッシュが肝心なのでなんとか仕込みたいところ。

最後の週末2日目、22日(日)は前日の責任者直前集会に続き、部署別の直前集会が行われていました。全体の連絡・調整を行う事務局のメンバーが複数の会場を飛び回ったり、準備会事務所から出かけて集会に行き、また戻ってくるメンバーがいたりと、それぞれに忙しい週末となったようです。中にはこの週末を40歳の誕生日(コミケットと同い年!)迎え、集会後の打ち上げで祝われていたスタッフもいたとか。コミケットの申し子ですね。

一方、準備会事務所には共同代表と事務局メンバーの一部が集まり、当日の共同代表の動きについて最終確認を行いました。設営日に行う海外イベントとのラウンドテーブルや歓迎イベント、当日の開会式・中夜祭・シンポジウム、そしていつも直前に入る取材と、共同代表の出番が通常開催より多いため、3人それぞれのタイムテーブルを作り、役割分担してもらっています。共同代表からは「最初のあいさつくらいは英語で言いたい」という熱いリクエストもありましたので、現在もろもろ準備中です……お楽しみに。

打ち合わせの一方、事務所では様々な制作物の作業も休むことなく進んでいます。OTAKU EXPOにおける海外・国内イベントブース「World Events Exhibition」向けには、A0のイベント紹介ポスターが次々印刷されています。また、来日した海外イベント団体の方々にとって、おみやげともなる「旅のしおり」の制作も追い込み作業中。まだ入稿していないサークルさんも、諦めないで一緒にがんばりましょう。そして「コミケット40周年ブース」も英語化の最終段階に入っています。世界からの参加者にコミケット40年の歴史を感じてもらえるブースになりそうです。

長かったスペシャルの準備も、第四コーナーを回ったところでしょうか。このコラムもいよいよ最終章に突入。紹介を忘れた企画がないかなど、チェックをしています。もし、何か取り上げてほしい質問などあれば、コミケットスペシャル公式Twitterまで@ツイートを飛ばして下さい(冒頭に「直前レポート質問」と書いてもらえると分かりやすいかも)。いくつか選んで回答できればと思います。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#21

3月21日(土) 第21回「会議は踊る」

最後の週末1日目、21日(土)には責任者50~60名が集まり、午前から夕方まで最終確認のための責任者直前集会が行われました。この2週間くらいの状況アップデートを行った後、タイムテーブルを追った最終確認が始まりました。15分刻みで切った各部署タイムテーブルはA3で印刷しても15枚になります。これだけでは整合性が把握できないので図面上に「この時間はどこで何が行われているか」を落とした資料を見ながら、シミュレーションを行っていきます。その時間、共同代表や事務局メンバーがどこにいるのか、どのシャッターが開いて/閉じているのか、どのエスカレーターが上り/下りで動いているのかなど、多岐にわたる確認事項を詰めていきます。

突き詰めれば、ヒト・モノ・時間・空間という資源をどこに、どのように割り当てるかに尽きるでしょう。何時から何時までどこで何をやるのか、誰がどこに配置されているのか、必要なものはそこに準備されているのか……一人の視界は限られていますから、一つ一つの積み上げをどのように統合し、全体としての整合性を担保していくのか、今回は特にそこに留意しながら、全体運営を行うようにしています。

午後からはシミュレーションで見出した課題と、2月下旬の前回ミーティングでの積み残し課題について、各部署からの発表を元に潰し込みをしていきます。特に通常開催には無いオペレーション――海外イベントやステージに関連する企画は、集会での相互チェックを通じて、完成度が急速に高まってきました。

最後は事務局長によるまとめと、共同代表それぞれからの激励。今回はイベントの規模・企画の多様性いずれの軸で見ても、過去のスペシャルで最大規模。現時点で確定していないこともあります。但し、この集会を通じて「何が決まっていないのか」「どうしていま決めないのか」「いつまでに決まるのか」を明確にして、最終週を迎えられそうです。

会場となった外苑前の日本青年館は、準備会の作業合宿・作業集会の会場として数々のドラマを生んできましたが、東京オリンピック・パラリンピックに伴う再開発により、4月1日で閉館されることになっており、準備会が日本青年館で行う、最後の集会となりました。ちなみに、一部の人には「テニミュ」の会場として有名かもしれません……当日も上演されていました。

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※ かつて、通常開催カタログのカットページ編集作業(3万枚以上のサークルカットの貼り込み作業)は、1泊2日の作業合宿という形で行われていました。オンライン申込比率の増加と、それに伴うカットページ作成自動化によって人手を要する作業量が減少したため、現在ではデータ・カットの順番などをチェックする終日の作業集会になっています。

終了後はとりあえず飲みに行く人、事務局に向かう人、自宅に帰る人とそれぞれ。準備会はボランティアであるがゆえ、いつ・どこで・どこまでやるかは、そのひと次第です。それでも背中を預けながら、時には喜怒哀楽をぶつけながら、真剣勝負を繰り返す――大人になるとあまり本気で笑ったり、泣かなくなったりしますが、準備会っていつまでも高校野球のチームみたいだなー、と時に思います……運動不足の文化系ではありますが。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#20

3月20日(金) 第20回「Overnight Sensation」

※ 執筆・アップロードをためてしまい、何日のレポートだか分からなくなってきたので、頭に日付を入れました。既にお察しの方もいると思いますが第n回が3月n日のレポートということになっております。

最後の週末を前に、春休み(懐かしい響きだ)の学生スタッフや、休暇を取った社会人スタッフが、昼間から事務所に詰めていました。ウェブサイトの更新もハイペースで続き、中夜祭の楽しみ方等の新しいコンテンツが追加されています。今回の中夜祭は豪華アーティストによるライブであると同時に、コミケット40周年を祝い、海外からの仲間を歓迎する「祭」ですから、乾杯があったり、コスプレが可能だったりします。ご時世ですので、お酒の提供に当たっては、明らかに大人に見える方でも身分証の提示をお願いしますので、忘れずに持ってきて下さい。

さて、今回は舞台裏のお話ということで、設営・撤収についてお話しします。準備会で設営・撤収を担当するのは「設営部」という部署で、これは当日の各担当のスタッフが集まり構成されています。数十名程度の設営部メンバーだけでは設営はできませんから、参加者有志が会期前日の設営日に集まり、当日の会場を組み上げていきます(詳細はカタログでの告知や、設営部の公式Twitterアカウントをご覧下さい)。今回のスペシャルでは、設営日(27日)の12:00に「中央モール2階の展示ホール5入口前」が集合場所となっておりますので、興味ある方はぜひともご参加下さい。

なお、今年1月に放送されたNHKのコミケット特集で、この設営過程を早回しで流していましたが、机・イスが恐ろしい早さで並べられていく様子は壮観です。準備会の様子を覗いてみたいという方は、この設営作業に参加するのが早道かもしれません。私も一般参加・サークル参加の際に設営を2年くらい経験してから、スタッフになりました。

一方の撤収については、最終日の閉会後に行われます。こちらは各ホールに机・イスの集積所を作り、そこに机・イスを積み上げた上で、トラックに積み込んでいきます。サークルさんが自分のスペースの机・イスを集積所に持って行って頂くだけでも大変助かりますので、最終日に参加されるサークルさんはご協力をよろしくお願いします。

※ 今回のスペシャルでは、通常開催時に最終日18時ごろから行われる共同代表参加の「反省会」は予定しておりませんが、撤収終了時に簡単なご挨拶を行う予定です。

今回のスペシャルは通常の設営・撤収に加え、1日目と2日目の間に会場の組み直しがあります。こちらは作業が深夜に及ぶこともあり、準備会スタッフ以外の有志は募集しませんが、大変な作業になりそうです。多数のサークルさんにお申し込み頂いたため、1日目と2日目で隔壁の位置や、机のレイアウトが変わります。このレイアウトに従い机・イスを並べ直すのですが、課題となるのは中夜祭を行う展示ホール1の設営作業です。客席部分は21:00頃に中夜祭参加者の退場が終わり次第、設営を始めることができますが、ステージ部分の設営は一体何時開始になるのやら……。いまのところタイムテーブルには、通常開催のコミケットではあまり見ない時間帯の予定が踊っています。

個人的には設営と撤収を通じて、コミケットという「場」に魔法がかかる・解ける瞬間が見られると思っています。ビッグサイトでも幕張メッセでも、借りたばかりのホールというのはコンクリート打ちっ放し、灰色の壁と床に囲まれたただの無機質な箱です。そこに設営有志が入り、机とイスが並べられ、トラックが走り回り、スペースに梱包が積まれていくと、そこはいつの間にか参加者と表現を受けいれる「場」になっています。設営日の施錠が終わり、誰もいなくなった時間帯の会場は、借りた直後と同じ会場のはずなのに、不思議な「温度」を感じます……うまく説明できないのですが。

逆に数時間まで人で埋め尽くされていた会場が、数時間の撤収を経てただの箱に戻り、清掃車両が走り回るのを見ると、夢から覚めたように我に返ります。我々は、場に魔法をかけているつもりで、実は場の魔法にかかっている、形式的な言い方をすれば共同幻想を見ているのかもしれません。

コミケットという共同幻想は世界に広がるのか――今回のスペシャルのテーマを問いの形にすれば、こんな言葉になるのでしょう。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#19

第19回「不惑」

今週末に行われる全体での責任者直前ミーティング、部署別のミーティングなどの資料が飛び交い始めました。前回のミーティングで出た「宿題」に対し各々がどう考え、調整を行い、運用に落とし込んでいるのか。そして、新たな「課題」にどのように取り組んでいるのか。相手を信頼して背中を任せながらも、協力しながら死線を潜り抜けて行くこの空気は、イベント直前の醍醐味かもしれません。

担当ごと・企画ごとに、また時には時系列を追いながら、懸念点を洗い出していきます。「やらなくてはいけないこと」と「やったほうがいいこと」が大量に出てくる中、残りの時間・ヒトをどのように投入していくのか、胃の痛い日々が続きます。

さて、OTAKU EXPO(展示ホール5)内の記念すべき「コミケット40周年ブース」をご紹介します。第1回のコミックマーケット(正確には「第1回」とも銘打たれていなかったのですが……)が開催されたのは40年前の1975年12月21日、会場は虎ノ門の日本消防会館、参加サークル数はわずかに32サークル、参加者数は推定700人でした。それから39年、昨夏のコミックマーケット86の参加サークル数は約35,000サークル、参加者数は55万人と約1,000倍の規模にまで拡大しました。

※ Wikipediaで1975年のできごとを調べたところ「タイムボカンシリーズ放送開始」「アタック25放送開始」など、なぜか今年とつながる話題の多い年ですね。

40周年ブースではこうしたコミケットの軌跡を年表で追います。歴史の中で繰り返された場の継続に対する危機、そしてそれをどう乗り越えてきたのか、コミケットという場がある種の奇跡の上に成り立っていることが見て取れるかと思います。

また、40年の歴史の中で、同人文化における潮流も著しく変わってきました。カタログ表紙や企業ブースパンフレット表紙、森林保護募金ポスターの展示では、時代と共に変わりゆく技術の進化や、絵柄の変化などを感じ取ってもらえるはずです。併せて、前回のスペシャルで水戸の地元企業さんとコラボして作った商品群も展示いたします。

続いて、サークル参加申込書セットに付属する、参加者と準備会のコミュニケーション媒体である「コミケットプレス」も、今年20周年を迎えます。わいせつ・児童ポルノ・著作権・税金……といった同人誌を取り巻く法令についての情報提供、印刷会社・出展企業・鉄道会社……といったコミケットにかかわる企業の声、そして時にはコミケットの舞台裏紹介など、様々な記事を掲載してきました。ネットの普及以降は「ぐぐれる」内容もあるは確かですが、こうした事実をコミケット視点で解釈してお伝えするという、重要な役割を果たしてきたメディアです。この20年間の同人界の流れを映す鏡になっていると思いますので、ぜひご覧下さい。

※ プレスの説明にやたら力が入っているのは、実は10年間くらい私がコミケットプレスの小人さんをやっていたからだったりします。今回の出張版でついにカタログに似顔絵が載ってしまいました……ちょっと嬉しいです。

そして、サークルさんやコスプレイヤーさんの参加企画である「モザイクアート展示」です。こちらはイラストやコスプレ写真を組み合わせて、1枚の絵としております。近くで個々の画像を見るときと、少し離れて全体を見るときで全く異なる様相に驚かれるかと思います。これは当日生で見ないと迫力が伝わらないと思うので、私も楽しみです。

最後に準備会記録班による記念映像の上映です。資料として撮影しているため、準備会スタッフ以外にはこれまであまり公開してこなかった記録映像を編集し、40周年を記念する映像となるはずです。いったいどんな中身になるのか、ドキドキしますね。

※ 文章からお察しの通り、19日現在制作中ですので、ドキドキもひとしおです!

以前より告知していた鈴木心さんの写真展「Comiket Photo Gallery」(参加者のみなさんを撮影する「鈴木心写真館」は企画サークルのある展示ホール3なのでお間違いなく)もこのブースで行います。鈴木心さんならではの大群衆の切り取り方は見所バツグンだと思います。

ということで、文章量からも分かる通り、盛りだくさんのコミケット40周年ブースに、是非とも足を運んで下さい。人間だと40歳は「不惑」ですが、コミケットという「場」はこれからも参加者のみなさんと共に変化していくはずです。それは場であるがゆえ、そこに集う参加者と表現によって変化するということであり、場として継続するために柔軟に形を変えていくということでもあります。「賢者は歴史に学ぶ」という言葉がありますが、参加者のみなさんが未来のコミケットを考える礎石となれば幸いです。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#18

第18回「春風」

今週はずいぶん温かくなってきましたね、当日も温かくなると良いのですが……などと言っていると花粉症の人の恨みを買う今日このごろ。言いたいことも言えないそんな世の中じゃ(以下略)

というわけで、一部のスタッフは花粉症に悩まされつつ、OTAKU EXPOリーフレットの校了作業や、海外イベント団体向けの「しおり」作成などを進めています。リーフレットの表紙が上がってきたので、ここで初公開したいと思います。イラストは白羽奈尾(Dmyo)さん(サークル名:Snow Ring)に描いて頂きました、素敵!

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さて、このプログレスレポート自体がその一環なのですが、通常開催とは何もかも違うスペシャルでは「広報」が非常に大事です。無数にある企画を、どうやって抜け洩れなく公式WebサイトやTwitterで発信していくか、その進捗管理だけでもなかなか大変です。

また、前々回の本レポートでもお伝えした通り、コミケットでは「公」とのつながり・連携を重視しています。それは、「コミケットを継続していく」ための活動でもあり、純粋に仲間を増やしたいからでもあります。こういったつながりは、様々なメディアに取り上げてもらうことにより、仲間が集う「場」をより確固たるものにしてくれます。ですから、マスメディアに取り上げてもらうための広報についても、いつも以上に考えて準備をしています。かつては「参加者がこれ以上増えると大変だから広報しない」などと言っていたコミケットですが、時代は変わるものです。

スペシャルは広報面でも「実験」の場であったりします。コミックマーケット準備会が公式のTwitterアカウントを作ったのが2011年2月。それに先駆けてスペシャルが公式のTwitterアカウントを作ったのはスペシャルに向けた準備が佳境に差しかかった2009年11月です。水戸で開催されたCS5の当日、総本部で壁に投影されたハッシュタグ#cmkspの検索結果がものすごい勢いで流れるのを見て、リアルの場であり、高度な情報戦でもある(笑)同人誌即売会と、Twitterの相性の良さを痛感しました。なおCS6では海外向けにFacebookでの情報発信(英語のみ)を始めています。Facebookユーザの方は「いいね!」してもらえると嬉しいです。

※ なお、時代錯誤かもしれませんが、問い合わせは返信用封筒の同封の郵便とさせて頂いています。少し調べればわかる「カジュアルな質問」が大量に来た場合、ボランティアベースでは抜け洩れのない対応が難しく、継続が困難になってしまいます。

ずいぶん話のマクラに紙幅を使ってしまいましたが、今日は企業関係企画のご紹介です。今回の企業ブースは当初の予想を上回り、約120コマと大変多くの企業さんの参加となりました。スペシャルに向けて新商品も用意するなど、かなり力の入った企業さんも多そうです。スペシャル公式Twitterアカウントでは各企業さんの宣伝をリツイートし、ご紹介していますので、そこを辿りつつチェックするのも良いかもです。また、飲食のケータリングも1ホール(中夜祭・2日目のみ)・3ホール・5ホール内に、合計で8店舗あります。

今回、新たな取り組みにあたり、通常の出展以外の形でさまざまな企業さんのご協力を得ています。niconicoさんとの連携は以前に説明させて頂きましたが、それ以外にもステージへの音源の提供でJOYSOUNDさん、会場内の海外向け無料Wi-Fiサービス提供ではIIJさんのお力をお借りしました。改めて御礼を申し上げます。

日本の観光立国化を目指して、観光庁が「訪日外国人3,000万人プログラム」(2013年は年間1,000万人超)に取り組んでいますが、同プログラムにおける調査で最も多い不満は実は「無料公衆無線LAN環境」なのです。今回のスペシャルではそんな不満を事前に解消!ということで、実験的に導入することにしました。もちろん、日本のみなさんもご利用頂けますので、積極的にご活用下さい。

新しい取り組みに際し、連携先がじわじわ増えて行くと、こういうコラムで競合サービスの話が書けなくなってしまうかも……言いたいことも言えないそんな世の中じゃ(再び以下略)

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#17

第17回「キラーチューン」

いよいよ当日まで10日となり、平日とはいえ大量のメールが飛び交います。会場との打ち合わせも細部へと進み、ゴミ箱や喫煙所の運用などに関する最終調整が行われています。警察・消防への書類提出やごあいさつも無事に終わりました。そして今回の目玉のひとつである中夜祭についても、舞台監督さんなど外部の専門家と綿密なやり取りが続きます。事務局としては全体を見渡しつつ、遅れているところがあればタスクを確認してテコ入れ……ラストスパートというにはあまりに長い全力疾走が始まりました。

ウェブサイトには写真家の鈴木心さんへのインタビュー(全4回)の掲載を始めました。こちら読み物として非常に面白いので、ぜひご覧下さい。なんと、第1回は意外にもほぼゲームのお話です!

さて、今回は企画サークルのご紹介です。通常のコミケットでは当選率を高めるために、サークルさんには「机とイス」という定型フォーマットしか提供できていません。これは自由な表現の場であるコミケットとしては本意ではありません。そこで、スペースの広さやレンタル資材など様々な要望に応えるのが「企画サークル」であり、スペシャルの一つの定番となっています。ゲームの筐体を持ち込んだり、鉄道模型を走らせたり、工作等の体験型の企画だったり……とまさに可能性は無限大。今回のスペシャルにおいては、企画サークルには2メートル四方を1コマとして、2日間通しで参加頂きます。(ちなみに最大のサークルさんは15コマ!)

※ 私も口伝でしか知らない晴海時代のCS2では、雀卓を持ち込んで4つの列を作り、上がったところから頒布したサークルがあった……というような「伝説」も数多く生まれています。

企画サークルというのは、初期コミケットが持っていたであろう「文化祭」的な雰囲気の象徴かもしれません。こうした自由度の高い参加形態は、コミケットの参加者が急激に増加し、その規模が急激に拡大する過程で、泣く泣く切り捨ててきてしまった要素です。通常サークルと比較して、企画サークルの受け入れにはサークル配置や資材発注、設営などの様々な側面で個別対応を必要とします。しかし、コミケットの「あらゆる参加者と表現を受け入れる」という自己規定を充足するためにも、こうしたチャレンジを続けていくことが大事なのかな、と思っています。

また、ステージ企画のご要望があったサークルさんによる、常設ステージでの企画もあります。まずは「Avalon SCA」(スペース番号P37)さんによるステージが、1日目(28日)13:00~13:15、2日目(29日)11:30~11:45の二回行われます。こちらは西欧文化のサークルさんで、西洋剣術のデモンストレーションが行われるとのこと。もう一つは1日目の15:00~16:00に行われる「SP救五有志によるチャリティーライブ」です。こちらはタイトルから分かる通り、準備会の某担当有志が企画しているライブです。カタログ原稿によれば地下アイドル・魔法少女アイドル(!?)などが出演。お楽しみに。

そして、企画サークルの一枠ではありますが、準備会スタッフ有志による準公式企画として「コミケde縁日」(スペース番号P15)も行われます。こちら、コミケットという「ハレの日」には欠かせない「縁日」を海外からの参加者にも楽しんでもらうために、有志が立ち上がりました。過去の森林保護募金のポスターなど豪華景品も用意していますので、ぜひともご参加下さい。

企画と言えば、スタッフの誰かが「当日、事務局長はビッグサイトから幕張メッセまでマラソンで向かい、閉会寸前に『サライ』が流れる中で会場入り」という企画を持ちかけてきましたが、なんとか阻止しました。某電波少年のヒッチハイクとか、某どうでしょうのサイコロの旅とか、ちょっとした理不尽を伴うロードムービーって、いつの時代もいいですよね。スペシャルが終わったら旅行に行くぞー!

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#16

第16回「ヘルタースケルター」

ヘルタースケルターを「しっちゃかめっちゃか」と訳したのは岡崎京子だと思っていたんですが、ビートルズの元盤の時点からそう訳されていたらしい……などと、トリビアに逃げる間もないくらい、しっちゃかめっちゃかです。海外イベントへの最終確認はまだまだ続いていますし、ステージ関連の演出も日々動いています。

前回のコラムで前フリしておりましたが、月曜の午後にOTAKU EXPOのシンポジウム『俺たちのコミケがそんなに悪いイベントなわけがない~「公」の中の人がコミケとファンイベントを語る~』を発表しました。熊谷俊人千葉市長を初めとする豪華パネラーの顔ぶれはもちろん、そのプロフィールも必見です。

熊谷市長のプロフィールに「コミケで売り子した経験」と書いてあるのを見て、本当の意味で「マンガ・アニメ等に理解のある」世代が政治の中心に登場しつつあると思いました。ともすれば、参加者自身がコミケットに参加していることを恥じらったり隠したりすることも多い中、こうして堂々とプロフィールに書ける方が、政令指定都市の市長を務めているのは心強いですね。

今回のスペシャルが「OTAKU SUMMIT 2015」という、ややコミケットの身の丈を超えていなくもない(笑)テーマを掲げて出港したのも、コミケットという「場」を未来につなげるために海外、そして「公」との関係を強めていこうという思いがあります。

記憶に新しい人も多いと思いますが、2012年のコミケット83では脅迫状が届き、会場・警察の強い要請に基づき、一部サークルに参加を見合わせて頂く結果となりました。これを受け、コミケットは共同代表を中心に「場の継続に向けた意志」を確認し、コミケット84発行の「コミケットマニュアル」で理念を書き改めました。ここでは、同人誌即売会同士の協力関係を強めること、省庁・アカデミアと連携を深めることなどを指針として定め、公式Webサイトにも掲載しました(英語版もあります)。こうした流れを受けてコミケット85で発表されたのが、今回のテーマです。

「いざ」というときに一緒に戦える仲間を増やす――この方針は昔からあまり変わっていません。同人誌即売会であるコミケットに企業ブースが設置されたのも、著作権者から理解を得ることが一つの目的でした。新たにコミケットに来た人(海外イベント団体や省庁・自治体)に仲間になってもらうには、「場」のパワーをしっかりと感じてもらい、楽しんでもらいたい――個人的にスペシャルに込めている想いはその一点です。まずは参加者のみなさんに「同人誌即売会」として、より正しくは(企業ブースやコスプレも含む)「コミケット」として、圧倒的に楽しんでもらう。そんな場を目指して、しっちゃかめっちゃかですが船の舵を取っています。

今回、スペシャルの一環として2日目(29日)「くろケット」を開催することにしたのは、同ジャンルに対する「みそぎ」でもありますが、スペシャルという場をより多くの参加者が楽しめるものにするためでした。詳細はくろケットのサイトに譲りますが、『黒バス』愛にあふれたメンバーが、プチオンリー、チラシラリー、アンソロジー発行など、様々な企画を準備しておりますので、是非ともご覧下さい。(ホール内で相互通行が可能です)

当日が迫り、改めて痛感するのは、スタッフにとってスペシャルの準備は「普段使わない筋肉を使う」作業だということです。準備会はコミケットという巨大な場を、安定的に開催することに特化した、アスリートのように「無駄な筋肉が付いていない」組織です。

スペシャルは場を用意するだけでなく、ステージや企画展示などを自分たちで企画し、中身を創らないといけない。スペシャルでは普段の「内輪」を超え、違う担当の人や外部の専門家と共同作業しないといけない。スペシャルにマニュアルやタスクリストはなく、ゲームの説明書に載っているワールドマップ程度の全体像を元に、自分でマッピングしていかないといけない。どれも普段使っていない筋肉を使うコトだから、長くやっている人ほど負荷がかかり、筋肉痛になることもありますが、そこには新しい筋肉がつきます。

我々は20年間ビッグサイトに「安住」していたため、外部環境の変化に対する「筋肉」は残念ながら弱くなっています。表現規制の問題やTPP交渉などの社会情勢、そして2020年東京オリンピック・パラリンピック開催。こうした筋力強化も、「いざ」というときに備えた、大きな計画の一部なのかもしれません。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#15

第15回「Eyes on Me」

日曜日の準備会事務所では、企画サークルや出展企業・搬入企業向けの最終発送作業が行われていました。また、40周年記念展示などの追い込みも進んでいます。海外イベント向けの最終案内送付などの準備も着々と進んでいます。

海外イベントとやり取りする際のスピード感は、国内と全く違います。返事が遅かったり、〆切でも「未定です」と言われたりということは日常茶飯事、もろもろの日程が押してきています。逆に我々も、多数のイベント団体に英語で返事を書いているため、反応が遅くなってしまうこともあり、お互い様といえばお互い様なのですが。

英語でメールや文書を作るときに大変なのは用語をどう統一するかです。そもそも「コミックマーケット準備会」は「Comic Market Committee」と訳しています。そもそも「準備会」という同人以外であまり目にしない日本語をそのまま英語に直訳し「Preparation」等を入れてしまうと、意味不明になってしまいます。

また、コミケットの理念に登場する用語も、独特の曖昧なニュアンスで使われており、代表あいさつ等の翻訳はネイティブのスタッフにお願いしました。以前にコミケットマニュアルを改訂し、英語版をWebに掲載した際、基本的な単語--例えば「参加者」や「作品」「表現」に対しては、基本的な訳語を定めています。「参加者」はそのまま「Participants」ですが、「作品」は「Creative Works」、「表現」については「Self-Expression」という訳語を基本としています。英語で「Expression」単体だと、感情表現というニュアンスが強いとのこと。ちなみに「ハレの日」は「Day of Hare」とした上で注釈を付けています。

ということで、英語のお勉強でした。正式には今週中に公式サイトで告知があると思いますが、今回のスペシャルでは「自分は英語が話せるので、困っている海外からの参加者がいたら声をかけてね」という方に対し、自己申告制で「通訳ボランティア」であることを示す「シール」を配布する予定です。配布場所などについては追って案内があると思いますので、当てはまる方は是非ともご確認下さい。

むかし「英語の歌を歌えるようになると、英語が得意になる」という都市伝説を信じ、カラオケで全編英語の歌を練習しました。懐かしきFF8の「Eyes on Me」でしたが、適当に歌詞を潰してカタカナにして歌ったため、むしろ英語力が低下した気がしますが、手遅れ感が甚だしいですね。

※ 今だとペルソナとかなのかしら……。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#14

第14回「凍える生放送」

CS6をいよいよ2週間後に控え、週末は責任者メーリングリストでのメールの流量が激増します。14日は土曜日ということで、いつもの倍といったところでしょうか。そんな中で、中夜祭の曲目が決定しつつあるというメールがあり、私はセットリストを見て小躍りしてしまいました。中夜祭の告知ページはこちら……曲目は当日までお楽しみですが。

※ 逆に言うと、私は当日までの大事なドキドキを失ってしまった気がする……。

さて、本日はセミナーブース企画の紹介です。こちらでは、先に述べたアカデミック系のシンポジウムやラウンドテーブル意外にも、出展する海外/国内イベント団体・ミュージアムによる10分間のプレゼンテーションが続々と行われる予定です。ブース・パネル出展では表現できなかったイベントの特徴や各国のマンガ文化について、投影資料なども用いつつ各イベントの代表者に語って頂く予定です。

このイベントプレゼンテーションの特別枠として、国内イベント団体としてOTAKU EXPOに出展する博麗神社社務所さんによるステージ企画「東方サミット」を1日目(28日)の15:05~16:00に開催します。コミケットにおいて、同人ソフトとして初めてジャンルコードとなり、ボーカロイドやニコニコ生放送といった周辺メディアと相互作用しながら、同人界に旋風を巻き起こす東方Projectジャンルがどのように成長してきたのか、そしてどのようにさらなる進化を遂げていくのか、最前線で「場」を創っている方たちの想いを聞けるチャンス。生放送もあるとのことですので、同ジャンルのファンはもちろん、今さら聞けないというあなたもぜひご参加下さい。

ニコニコ生放送といえば、昨年12月20日にniconicoの公式生放送に安田代表が出演してスペシャルのPRを行い、同27日(コミケット87設営日)にはアトリウムからコミケット初の公式生放送がありました。私もスペシャルの紹介で少しだけ出演したのですが、とにかく冬のアトリウムは寒く、コート・マフラーのフル装備で臨みましたが、それでも転換中は座っているのが厳しい状態。そんな中でも普段着で淡々とMCを続けられるお二人に、プロの姿を見た気がしました。

※ あのときは「えー」などの間投詞を挟まないよう意識しすぎて、話の間が変になっていました。正月に実家に帰ったとき、両親からリクエストがありタイムシフトで見直したのですが、家族と見直すのは罰ゲームでした……。

niconicoに関連してあと二つほど告知を。一つ目はかつてのコミケットで行われていた「ブロックノート(注1)」のリバイバル企画である「ブロックシート in コミケットスペシャル6」です。こちらの企画はサークルさんにシートを配布し、記入頂いたイラストやレポート、サークルのPRなどを、スペシャル当日に会場で掲示、希望するサークルさんのシートはドワンゴさんの「ニコニコ静画」に同時にアップし、共有していくものです。当日のサークルさんと参加者の新たな出会いを産むだけでなく、ネットを活用したブロックノートの21世紀版ということで、どのような形になるのか今から楽しみですが、サークルさんは積極的にご参加の程、よろしくお願いいたします。

注1)2000年まで存在したノートで、サークルに回して自由に絵や意見を記入してもらい、サークル同士やサークルと準備会のコミュニケーションに活用されていた。また、カタログには膨大なノートから名作をセレクトした「ブロックノートセレクション」が掲載されていた。

二つ目は4月25・26日に行われる「ニコニコ超会議2015」です、今回のスペシャルとのコラボレーション企画である「超コミケットスペシャル」が出展するという企画です。常に通常開催の準備でてんてこ舞いのコミケットが、他のイベントで見られるのは非常にレアです(注2)。今回のスペシャルのアフター企画として、40周年記念展示やブロックシート展示を初めとして、ニコニコ超会議ならではの企画を検討中。普段は見られない、スペシャルの混沌とした舞台裏が垣間見られるかも? こちらは近日中に詳細を公開予定、お楽しみに。

注2)講演であれば多数ありますが、出展となると招待されたベネチア・ビエンナーレや日本開催時のワールドコンなどを除いて、ほとんどありません。

いろいろとネットメディアとのコラボレーションの話を書いたので、最後に少しですが、マンガの話をさせて下さい。昨日、ふと平積みになっていた『いちえふ』(講談社)を手に取り、お試し版を読んだ勢いで2巻とも買ってしまいました。こういう「働いてみた」的なジャンルって、実写だったら成り立たないもので、マンガという表現の力について、改めて感じました。既に高評価ゆえ逆に敬遠している人もいるかもしれませんが、未読でしたらぜひ。

(事務局長)

直前レポート『修羅場の車窓から』#13

第13回「隠し球」

少し遅くなりましたが、13日の金曜日分のレポートをお届けします。カタログのステージタイムテーブルで「Coming Soon」とされていた1日目のステージ内容は、月曜日中には発表できそうです。現在最終調整中なので、もう少しお待ち下さい。シンポジウムなのですが、結構びっくりするような登壇者・内容になると思います(無駄にハードルを上げてしまっているかしら……)。

また、非公開ではありますが、国内団体・海外団体を招いて事前に行うラウンドテーブルや歓迎イベントなどの詳細も、徐々に詰まってきています。こうしたイベントは準備会の中にそこまでノウハウがないことも多く、本業での経験があるエキスパートの協力を得ながら、着々と作業を進めています。

さて、前段で述べた未発表のステージと一緒に紹介しようと思っていた、常設ステージにおける企画についてご紹介します。まず、水戸で開催された前回のスペシャルで好評だったステージの続編「幕張メッセよ! 私は帰ってきた! クリエイターズ トークライブ」を、2日目の(29日)13:30~14:30に行います。コミケットと関わりの深い3人のクリエイター、賀東昭二さん・氷川へきるさん・松智洋さんを招き、コミケットの過去と現在、業界の裏話について語り尽くして頂きます。

次に、今回のコミケットスペシャルのフィナーレとして、2日目(29日)15:00~16:00に行われるシンポジウム「オタク新世紀宣言~ファンのネットワーク構築に向けて」です。今回のテーマを発表した際(もう1年以上前ですね……)の代表ごあいさつには

アニメファンが特別な存在だった1981年、機動戦士ガンダムを作った富野由悠季監督は映画版ガンダムを見るために集まった一万五千人の聴衆に対して『アニメ新世紀宣言』を発表し、アニメが文化として認められる時代が幕を開けました。
(中略)
今回のコミケットスペシャルにおいて我々はオタク文化のファンとして、国内、海外でマンガ、アニメ、ゲームを愛する仲間たちといっしょに、『オタク新世紀宣言』とでも呼ぶべき、新しい時代への思いを語りたいと思います。

とありました。このシンポジウムの前半では、来日した海外イベント数団体に登壇頂き、日本のOTAKU文化の源流の一つであるコミケットを実際に見た感想や、自国のイベントとの違いについてお伺いします。また、事前に行われたラウンドテーブルでの議論の様子について、こちらで紹介したいと思います。そして後半では来日頂いた海外イベントが壇上に集結し、その場にいるコミケットスペシャル6~OTAKU SUMMIT 2015~の参加者と一緒に『オタク新世紀宣言』を公表し、そのまま閉会宣言になだれ込む予定です。是非、歴史の一ページの証人となって下さい。

※ 海外イベント多数登壇ということで、何が起こるか分かりません。そして時間通りに終了するのか、設営部もドキドキしながら見守っています……。

あっという間に、当日まで残り2週間を切ってしまいました。ここまで来たら怖いのは準備作業よりもインフルエンザ。楽しいスペシャルを家からTwitterで見届けることのないよう、みなさんも体調管理には十分に気をつけて下さいね。あ、ちなみにハッシュタグは#cmksp でお願いします。(ここでの告知は縁起が悪い?)

(事務局長)